ニューヨーク対談 #1 トミー富田さん

ニューヨーク対談

あなたに会えてよかった in NY

2007年10月11日(木)

#1 トミー富田さん


ハーレムコネクション代表/ミュージックプロデューサー
ニューヨーク市NPO「ハーレム・ジャパニーズ・ゴスペル・クワイア」主宰
(1985年来米)

*プロフィールはこちらを参照→クリック!

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拳銃で撃たれたことは2回。
ホールドアップは何十回あるか
わからない。


今回から7回にわたり、アメリカで出会った日本人や、日本に滞在したことのある方のインタビューをお送りします。ニューヨーク編で4人の方を、そしてロサンゼルス編で3人の方をご紹介します。

お一人目は、ニューヨークはマンハッタン北部、ハーレム地区の案内人をされている、トミー富田さんです。日本人観光客にハーレムの黒人文化を紹介するツアーを主催し、どれも大好評を博しています。また、ハーレムコミュニティーの一員として寄付を行ったり、ボランティア活動などを通じて、地域活動に貢献されています。そして、ハーレムの目抜き通りにある黒人音楽の殿堂「アポロシアター」の日本人唯一のボードメンバーとして、日本人シンガーのステージデビューをバックアップしたり、逆にハーレムの実力派ミュージシャンを日本に招聘したりという、音楽プロデューサーでもあります。ハーレム在住歴20年、まだまだエネルギッシュなトミーさんに、ゴスペルツアー参加後にインタビューさせていただきました。 

* インタビュー@ トミーズハウス(マンハッタン西139丁目)

トミーさんの略歴はこちら

ハーレム写真館



English



本当のジャズを聴きたくて。

今、私は68歳です。東京は浅草の生まれです。1972年にリュージュの選手として札幌オリンピックに出ました。だから、今でも体が丈夫なんです。
日本では、六本木でジャズクラブを3軒経営していました。当時かなり有名だった「バランタイン」というお店です。「バランタイン1」「バランタイン2」それと「ネロビアンコ」の3軒経営してましたね。六本木交差点のすぐそばです。70年代の当時はジャズ華やかなりし頃だったから、すごくはやりました。
でも82〜83年頃、その3軒の店を、全部やめてきたんです。当時、六本木が過渡期で、街に人がめちゃくちゃに増えてきた。それにバブルの兆しも見えてきた。そういうのがイヤでやめてきたんです。
もともとジャズが好きで、ニューヨークには何回も来ていました。だけど、本当のジャズを聴きたくなりました。それでこっちに移住しました。日本は画一化、統一化されちゃってますけど、このハーレム地区やニューヨークは「人種のるつぼ」というくらいいろんな人がいるし、いろんな文化があります。しかも、ここには世界の「最高」と「最低」があるんですよ。そこに面白さを感じました。


日本人はハーレムの敵!?

最初はソーホーとかグリニッジ・ビレッジにいたんです。あの辺のダウンタウンのジャズクラブには毎日回って全部行って、最終的にハーレムにたどり着いた感じです。あまりにハーレムに通っているものですから、ハーレムの地元の人たちが「是非ここに越してこないか」と言って、家まで紹介してくれたんです。
それでハーレムに越してきたんですけど、当時は辺りに全く日本人はいないし、住民も全く日本人についての知識がない所でしたから、すごく苦労しましたよ。
「中曽根発言」ってあったのを覚えてますか?87年に中曽根さんが黒人とプエルトリカンの知的水準を指摘したことで(*当時の首相、中曽根康弘氏が「アメリカには黒人とかプエルトリコとか、メキシカンとか、そういうのが相当おって、平均的にみたら知的水準が非常にまだ低い」と発言)、ハーレムの人たちにずいぶん刺激を与えてしまった。それで皆さん、日本人を目の敵にしたんです。その頃僕はちょうどここにいたんですけど、ひどかったですね。
危険な目にも何回か遭っています。拳銃で撃たれたことは2度あります。お腹を撃たれました。ホールドアップなんて数知れず、何十回あるかわからない。それは日本人を狙ってですよ。
それでも、ここにはやっぱり本物のジャズやゴスペルがある。ハーレムには教会が250カ所ありますから、毎週違う教会でゴスペルを聴いて、そうやってのめり込んでいってしまって、とうとうハーレムに住み着いてしまったんです。


「ハーレムナイトコンサート」

1994年からは年に1回、横浜のランドマークホールというところで「ハーレムナイトコンサート」を開催しています。これはハーレムのミュージシャンを日本に紹介するもので、ハーレムのミュージシャンを、僕が厳選して連れて行っています。おかげさまで大好評を博しています。毎年、大入り満員で、いつもチケットが、5日間公演分すべて売り切れちゃうくらいです。来年(2008年)は横浜、神戸、札幌、福岡の4カ所でやる予定です。年々盛大になってきていますね。

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「ハーレムナイト」ポスター


開催時には僕も日本に行くんですが、会場の上にあるホテルに泊まれるのを、僕もひとつの楽しみにしてるんです。ランドマークタワーの上にある「ロイヤルパークホテル」というところに泊まれるので、ミュージシャンもみんな喜んでツアーに行きますよ。
だから日本に帰ったら、僕は忙しいんです。ホテルからの景色が素晴らしいから、ミュージシャンや友達が遊びに来るんです。だから部屋から出られないんですよ(笑)。


ハーレムは、まだまだ閉鎖的。

ニューヨークの好きな所は、ジャズなどの音楽が街の中にあふれていて、どこでも聴けることですね。夏場も無料のコンサートがたくさんあるし、ハーレムには、日本にはまだ知られてないけど素晴らしいというミュージシャンがいっぱいいるんです。
でも、それと隣り合わせに危険もありますよ。今ニューヨークは安全な街だと言われているから日本人の観光客もいっぱい来ますけども、それはうわべだけであって、やっぱり危ない所は危ないんです。良い所と悪い所があるから、それは気をつけないといけないです。
いくら安全になったとは言え、みんなやっぱりハーレムには一人で来られないから、僕のところに来たがる。一方でニューヨークはかなり安全になったと言われているから、それで皆さんが僕のところにやってくる。それで僕らは危険な所と危険じゃない所を見極めて、危険じゃない所をご案内しています。だから危険な目に遭うことはありません。ただ夜遅くに変な所に行くと危ないですよ。まだまだそういう、ちょっと閉鎖的な所もありますね。


助け合い精神が旺盛な街、ハーレム。

僕がジャズに詳しいっていうことで、1人2人と友達を案内したのがきっかけで、ハーレムのジャズツアーを始めました。その後の88年に、ガイドブック『地球の歩き方』のニューヨーク編を、編集部と協力して作りました。それからツアーが大人気になったんです。毎日大型バスが出るくらい、大当たりしました。
おかげさまで収益が上がりました。だからその一部を、ボランティア活動の一環として地域にお返ししようと思いました。ハーレムの老人ホームにタップダンスとかジャズミュージシャンを連れて行って入所者にお見せしたり、老人ホームの人たちを食事にご招待したり・・・そういうことを今でも地道にやっています。それが認められて、94年にニューヨークのシビックリーグという黒人の団体から「ドクター・マーティン・ルーサー・キング賞」というのをいただいたんです。
ハーレムは「ギブ・サムシング・バック・コミュニティー」、つまり街に何かを還元しなくちゃいけないという場所です。街から何かしらの恩恵を受けた人は必ず、街に還元している。僕もハーレムを案内することによって収益を得たわけですから、ハーレムにお返ししたいと思ったんです。ハーレムは助け合い精神が旺盛な街なんですよ。本当に、浅草の下町みたいな所ですね。


麻薬中毒と闘うために歌う人々。

日本人とアメリカ人とでは、音楽性が根本的に違いますよね。ジャズそのものがアメリカから日本に行ったものだから、どうしても日本のジャズメンは本場アメリカのジャズを手本にせざるを得ない。そうやって日本のジャズ文化が育ったわけですけども、まだまだイミテーションというところが感じられますよね。

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黒人音楽の殿堂「アポロシアター


それとゴスペルですが、この音楽には宗教の要素が入っています。ハーレムには麻薬中毒のリハビリとしてゴスペルを歌うことを取り入れている団体があるんです。ARCゴスペルクワイアというグループで、そこに所属している聖歌隊のメンバー全員が、麻薬中毒患者もしくは元麻薬中毒患者です。彼らは中毒を克服したことへの神への感謝の気持ちをストレートに歌うんです。だから彼らの歌を聴くとすごく感動するんです。やっぱり精神からして日本人と違いますよね。
ARCゴスペルクワイアのメンバーは週2回リハーサルをやってるんですけど、すごいですよ。リハーサルを見たらびっくりします。皆さん、治療のために歌っていますから、鬼気迫るものがあるんですよ。

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ARCゴスペルクワイアのパワフルな熱唱!


宗教的な部分ではかなわない。

ゴスペルは黒人の虐げられた歴史の中から生まれた音楽で、黒人の心の中にはそういうものがルーツとしてあるから、ゴスペルに対する発想が日本人とは違います。だからゴスペルはどこまで行ってもゴスペルで、宗教的なものでは僕らではどうしてもかなわない。だからなかなか入りこめないものがありますね。
カソリック系の教会であんなふうに歌ったら怒られますよ。教会では、みんな静かにしていなきゃいけない。でも黒人たちの宗教では「メイク・ア・ジョイフル・ノイズ」、つまり騒がしくすることで神は喜ぶという解釈があります。彼らの教会のほとんどはバプチストの教会です。白人の教会と黒人の教会は根本から違うんです。
黒人は、毎年教会で死ぬ人が多いんですよ。みんな興奮して、「ホーリー・ゴースト」つまり神聖な霊に取り憑かれて、教会の中で心臓マヒを起こして死ぬ人がいるんです。でも黒人の人たちにとっては、それが一番良い死に方だそうです。神に召されて死ぬという・・・。


本物を聴くとみんなびっくりする。

日本の人たちにとってゴスペルと言えば『天使にラブソングを』ですよね。でもあの映画の舞台となっている教会は、バプチストでもメソジストでもカソリックでもない、何か不思議な、厳密に言えば現実に存在しない、架空の教会なんです。あれを見て「ゴスペルとはああいうものなんだ」っていうイメージを持っているから、来て本物を聴くとみんなびっくりするんですよね。
僕が主催しているハーレムツアーでは、そういう「本物」を皆さんにお見せしています。現在いろんな旅行会社さんがハーレムツアーを組んでいますが、ただ案内するだけのツアーもいっぱいあります。ハーレムは恐い、危険だっていうイメージを前面に押し出している旅行会社さんが多いんですけど、僕らのツアーはハーレムの僕の仲間や友達を紹介するっていう形で今までやってきました。僕の知り合いの輪の中に皆さんを連れて行ってご紹介するという感じですね。だから「本物」に出会えるんです。


ハーレムに生きる。

「日本人=ビジネスマン」というイメージを外国の人は持っているから、3〜5年もしたらみんな日本に帰るって思うみたいです。でも僕は違います。一生涯、ここで過ごそうと思っていますよ。
日本人はいつかは帰ってしまうというイメージがあるから、僕もみんなから「トミーはいつ日本に帰るんだ?」ってよく聞かれます。悲しくなっちゃうんですけどね。だから僕は「ここに骨を埋めるよ」とハッキリと彼らに言います。それでようやく皆さん安心してくれるんです。

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トミーさんにとって、ニューヨークって何ですか?

何でもありの街です。

僕はジャズが好きだからニューヨークに来たわけですけど、ニューヨークは世界中の
ジャズのルーツが全部揃っていますね。現代のジャズや音楽がいっぱいあるところです。
特にこのハーレムはジャズ発祥の地です。この土地からジャズが生まれたので、それを
見極めたいっていうことが僕にはある。だからこの街にいるんです。

ハーレムには自分が求めていた音楽のルーツがあります。

僕は毎日、ジャズとゴスペルに明け暮れて生活してますから、何とも言えないんですけど、
このまま音楽といっしょにいられたら幸せですよ。本場のジャズに浸ってね。

本場のジャズやゴスペルに浸って、ここにいられたら
幸せですよね。



トミーさん関連リンク

トミー富田ドットコム:http://tommytomita.com/

トミーズハウス:http://harlemtour.fc2web.com/

ハーレムツアー:http://tommytomita.com/tourmenu.html


ハーレムナイト(雑誌記事より):
http://www.ozmall.co.jp/travelleisure/ozneta/20070710/index.asp


ハーレム・ジャパニーズ・ゴスペル・クワイア:
http://harlemtour.fc2web.com/gospelwork.html


ARCゴスペルクワイア:http://wmg.jp/artist/arc/profile.html



ゲストハウス&ツアー写真館

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トミーズハウス                                                                                                   
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教会を出て街を歩くツアー一行         ランチを食べに食堂へ

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食堂内部                   食べ放題のソウルフード







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