2007年10月11日(木)
#3 アリーナ・クゼネツォヴァさん
俄(にわか)USAセールス&マーケティングマネージャー
(2007年春に来米、それ以前に東京に約5年滞在)

ここの人たちはあらゆる文化を
受け入れ、皆と同じように
私たち外国人と接してくれる。
NY3人目はロシア出身のアリーナ・クゼネツォヴァさんです。アリーナさんがニューヨークに来る前は、東京で外国人女性の日本での生活をサポートする会社に在籍し、フリーペーパーなどの広告営業をされていました。その会社は、日本にありながらも従業員の大半が外国人でした。
東京で外国人たちと仕事をし、ニューヨークでは京都に本社のあるジュエリーショップで、日本人の同僚とともに仕事をする・・・でもいろんな人と出会ったり、いろんな文化を体験するのが大好きなアリーナさんだから、そんなことは彼女にとってどうでもいいことなのかもしれません。
今日とは違う明日を求めるうちに、ニューヨークにたどり着いただけ。そんな印象を持ちました。
* インタビュー@ Le Petit Cafe(マンハッタン・ソーホー地区)
English
ニューヨークで話す、日本のこと。
ニューヨークは6ヶ月になります。ここに来る前には、日本に5年ほどいました。私は日本が好きで、来日してから日本企業での仕事に就きました。自動車を輸出する会社でのお仕事でした。その会社は世界中に日本車を輸出していましたが、ロシア市場には進出していませんでした。だから、ロシア市場を開拓するために、彼らは私を採用しました。ロシア極東地域は日本に近いし、日本車はロシア極東地域の自動車市場の98%のシェアを占めているからです。私たちはロシアの車が好きじゃないんですね。
私は、その会社で一年間働いたあと、「キャロライン・ポーバー・インク」という会社に入りました。その会社は 外国人向けのフリーペーパー「ウィークエンダー」の出版権を得ており、社長のキャロライン・ポーバーさんから、そこで働いてみないかとオファーを受けました。そして、2004年に彼女の会社に入りました。
その会社は日本に滞在する外国人女性の生活のサポートが業務の中心で、その業務の一環として、人材紹介会社「ブロードマインド・ビジネス」を立ち上げています。そこでは、日本に滞在する外国人女性の就職を手助けする業務を行っています。私が仕事を探していた時に、この人材会社に履歴書を送りました。
故郷で出会った日本。
私の故郷はロシア極東の港町、ナホトカです。父は船の乗組員で、仕事柄よく日本に行っていました。だから、私は子供の頃から、日本食とか、たくさんの日本の製品に接していましたし、「ありがとう」とか「こんにちは」「どういたしまして」などの言葉も、父が教えてくれました。
また、私はナホトカやウラジオストクに来るたくさんの日本人観光客をよく見ました。彼らは、ナホトカから出発するシベリア鉄道に乗って旅行に行くんです。
私は子どもの頃、ダンスをよくしていました。ダンスクラスではよく合宿に行ったんですが、そこへ日本人の学生さんも、休暇とか文化交流の一環で、私たちの活動に加わり、1ヶ月間生活を共にしました。私たちは日本人観光客にロシア舞踊を披露しました。そういうこともあって、私は幼い頃から日本人の方々と何らかの形でつながりがありました。だから、日本の文化を好きになったんです。
日々是勉強、日々是充実。
成田空港に到着してから、私はバスで神奈川県に行きました。たくさんの木や茂み、花などが至るところにあって、高速道路沿いにさえも花が咲いていたので、私はとっても嬉しく思いました。あれは1月のとても寒い日だったんですけど、もう花が咲いていたことを覚えています。そんな風景を見て、私は日本にいたいと思いました。子供の頃から日本文化が好きだったので、日本にいられることがとっても幸せでした。
日本に来てから、日本語学校に通いました。学生である限り、語学の勉強に集中できるし、勉強以外で困難な目にはめったにあわないので、学生の身分というのはいつの時代も良いものです。クラスの生徒はほぼ同じ年齢だし、興味の対象も似ています。どの生徒も外国人だし、一緒に漢字を勉強します。だから、好きなものや興味の対象が似ているんですね。いつも一緒に外出して、日本で私たちがまだ出会ったことのないものを探したりして・・・全てが新鮮でした。だから、あのころはとても充実していました。
初めて差別を経験。
しかし仕事を探し始めるやいなや、日本社会とか、日本の企業文化の厳しさを知ることになりました。日本のイヤな面をたくさん見ました。
私が日本語学校を卒業した後に入った自動車輸出会社は、主に男性社員が仕切っていました。彼らはとても保守的で、外国人社員を雇っているのだから国際的であるはずなのに、私はそこで差別を経験しました。なぜなら私が唯一の外国人女性社員だったからです。まず私が外国人だという理由で、それから私が女性だという理由で二重に差別を受けました。なので実際、日本の会社の労働環境に順応できませんでした。
私は外資系の会社を探し始めました。そして、前述のイギリス人女性起業家であるキャロライン・ポーバーさんが自らの会社に私を迎え入れて、新しいポジションを与えてくれたときはとてもうれしかったです。外国人を快く迎え入れてくれる雰囲気にあふれていたので、すごく良かったです。
最近、日本社会は大きく変化しているにも関わらず、差別は日本の奥深い所に未だ残っているように思えます。 一方で、ここニューヨークではまだ差別は経験していません。ここにはまだ短期間しか滞在していないし、まだ多くの会社で働いていないからでしょうね。
NYは、東京に比べてたくさんのことが不便なんです。
初めてニューヨークに来た時、私は東京と全然違うと思いました。ニューヨークは東京に比べてまるで発展していない街のように感じられたので、驚きました。テクノロジー、利便性、インフラ、地下鉄などは東京より大きく劣っています。特に地下鉄は私にとって今でも大きな問題です。マンハッタンのビルも、とても古いのが多いです。
ニューヨークでまず「イヤだな〜」と思ったのは、アパートの住人が誰一人として洗濯機を持っていないことです。みんなコインランドリーに行かなくてはなりません。それってとっても不便なことです。ロシア人や日本人はいつも家で服を洗うので、なぜそんなことをしなくてはならないのか理解できませんでした。公衆で使われているコインランドリーを使用することに、今でも違和感があります。それに、なぜ服を洗うために外出しなくてはならないのか分かりません。ここは、東京に比べてたくさんのことが不便なんです。
ロシアの方が自由。
これはロシアとの比較ですが、私はアメリカや日本では、ロシアほどの自由さを感じないんです。これはロシアに実際に住んでみてしかわからないと思いますが・・・ロシアは国土が広くて、美しい森があって、自然がそのままに残されています。人も心が広くて親切です。
アメリカや日本には、物事を禁止する法律がたくさんあります。そのおかげで社会はある一定の秩序が保たれているわけですが、一方で政府からの圧力とか、頭金とかローンなどの経済的負担にいつも頭を悩ませています。ロシアにも法律はたくさんありますよ。でもそれほど人をキツく縛る法律じゃなくて、良い意味で抜け道がある法律です。
ただ、だからロシア経済はアメリカや日本ほど発展していないんだとも言えるし、それが、今私がロシアに住んでいない一つの理由なのかもしれません。それでもロシアには自由な精神があふれ、人々の考えにリミットがないのです。まあ、このような気質もロシア経済の成長や国の安定化に伴って変わってきているんですけどね。
世界一の抹茶アイス。
日本の温泉がとっても恋しいです。巨大な銭湯があって、ウォーターマッサージとか、いろんな種類のお風呂が楽しめます。日本に住んでいたときは、毎週行っていました。
お祭りも懐かしいですね。花火、お花見、お盆休み・・・私は異文化が好きなので、時間を見つけては日本の伝統的なものを体験するようにしました。お花見は、共通の趣味を持つ親しい友人たちとしました。私たちはみんな日本の文化が大好きで、お祭りに参加して、伝統的な踊りを見たりしました。あと日本で大好きなのは、抹茶アイスです。中でも京都の抹茶アイスは世界一です。
日本のあらゆるものの効率の良さ、それに居心地の良さが恋しいです。東京では、全てのことが時間通りに進むし、欲しい物は何でも買えます。コンビニなんて、そこに行けば公共料金が払えるし、オペラのチケットも買えるし、そこから荷物を送ることだってできます。コンビ二でほとんどの事ができちゃうんです。アメリカでは全てにおいて面倒くさいので、日本のこういったものが恋しいです。
アメリカでは、全てが効率が悪く、全てが遅く、しかも決して正確に行われるわけではありません。中でもアメリカの郵便局には問題が多いです。あと、アメリカにも宅急便があったらいいなと思います。
NYには、本当にたくさんのチャンスがあります。
ニューヨークやアメリカの悪いところばかり挙げてしまいましたが、もちろんニューヨークには良い面がたくさんあります。
まず、ここでは世界中のあらゆる文化に触れることができます。私は自分の知らない世界を旅することが本当に好きなので、私にとってそれがニューヨークで一番楽しいと思う点です。私は異文化を学んだり、違う国の食事を試してみることが大好きなんです。ここでは、世界中のあらゆる食文化を楽しむことができるし、本当にたくさんのレストランやお店があるります。それにニューヨークにはリトルコリア、リトルトウキョウ、リトルブラジル、中華街、それに海沿いですがリトルロシア(ブルックリンのブライトンビーチ地区)など、民族色の濃い街がたくさんあります。
ビルが林立するマンハッタンも、一歩脇道に入れば小さなお店があるので、堀出し物をみつけることもできます。健康食品やオーガニック食品のお店もたくさんあります。
大都会ニューヨークを出て州の北部に行くと、美しい山や湖、それに川があります。そこでは川下りをしたりナイアガラの滝に行ったり、ハイキングもできます。私はここニューヨークで川下りやサーフィンなど、いろんなことを始めました。今年の夏は、ほぼ毎日のようにビーチに行きましたし。

ロシア語の看板が並ぶ街・ブライトンビーチ
人はそんなにオープンじゃない。
今までニューヨークでたくさんの人に出会いましたが、そこで気がついたのは、私が期待していたほど人々はオープンではないということでした。私がニューヨークに来た時、街の人はとても親切でした。だけど今は、前ほどオープンじゃないように感じます。それでもここに住む人は親切な人が多いですね。
ここに暮らす人々は皆それぞれに違うバックグラウンドを持っているので、私は人との出会いが本当に楽しいです。一つの街で世界中の人々と出会うことができるし、ここでは何が起こり、誰と出会うのか全く予想もつきません。毎日が驚きの連続です。
人は、それほど交じり合っていない。
ここの人たちはあらゆる文化を受け入れ、みんなと同じように私たち外国人と接してくれます。それが彼らの習慣なんです。世界中から人々が集まって、その人たちがやがてニューヨーカーになるのです。だから、誰もお互いをアメリカ人とか外国人などと区別しません。
でも、彼らは混在しているように見えますが、実はここには多くの「分裂」があることに気づきました。例えば、ロシア人コミュニティ内では同じコミュニティの人としか会いません。彼らは一緒に外出して、パーティを開いたりします。同様に、白人は白人同士、黒人は黒人同士で出かけますが、彼らが交じり合うことはありません。中国人はチャイナタウンに住み、他の民族もそれぞれのコミュニティに住みます。例えばここから2ブロック行けば、他民族の街に入るなんてこともザラです。
私は、ニューヨークの人たちははそれほど交じり合っていないということに気がつきました。ここには多くの文化があるように感じるけれども、人々は個々に生活していることに気がつきます。彼らはそれぞれのコミュニティに暮らしているのです。
もっと新しい文化に触れたい。だからNYに来た。
日本に5年間滞在して、私はたくさんの事を発見し、文化を満喫しました。しかし、環境を変え、他のことも経験しておく必要があるとも感じました。だから、日本を離れることを考え、そして結果的に、新しい文化を知るために違う国に行くことにしました。そして東京と同じようなライフスタイルや社会、文化を持つ唯一の場所だと思ったので、ニューヨークに行きました。
まず私が考えたのが、ロンドンやモスクワ、そしてニューヨークです。だけどロンドンはいつも雨というイメージがあります。私は気候のいい場所が好きですから、ロンドンは候補から外しました。
モスクワはとても大きな街で、多くの種類の文化があります。でもロシアだから、自分が経験してきたものとはそれほど違う文化ではないし、彼らは他の種類の文化に対してまだまだ閉鎖的です。私は新しい文化に触れたかったのです。違う国籍を持つ人に出会ったり、世界の違った一面を見たかったのです。
東京はとても多様性がありますが、それでも限度があります。多くの外国人が住んでいて出会いがあるにも関わらず、それがやがて日常化してきます。なぜならそのうちに会う人が同じになってくるし、彼らの行動パターンまでわかってしまいます。だから、私は変化を求めました。東京よりも大きな街に移りたかったし、もっと多くの外国人に出会える場所に行きたかったのです。
NYは外国人にとって快適な街。
ここに来る前、みんなこの街の治安の悪さについて話していたので心構えはしていたんですけど、最近はかなり安全な街になってきています。夜も問題なく外出することができます。
だけど、どの地域が安全かは知っておかなくてはなりません。中心部に行けば、多くの人がいるので全くもって安全です。時々、変わった人がいますが、自分が気をつけていれば大丈夫です。私は、危ない目には一度も遭っていません。
日本では、日本人と外国人は完全に分かれていますが、ここでは、その人が外国人かどうかなんて気にしません。英語の訛りも気にしませんし、自分が言っていることを、人は理解してくれています。ニューヨークの方が断然快適です。
ニューヨークは眠らない街です。ここでは多くの事が楽しめますが、主に、独身の人たちのための街のように思います。だから私に家族が出来た時は、もっと自然が近くにある、静かな場所に引っ越すと思います。でも、今はまだこの生活を満喫しているので、しばらくの間、少なくともあと2年はニューヨークに滞在したいです。

アリーナさんにとって、東京って何ですか?
私にとって東京は大きな挑戦でした。それに美しい日本文化を教えてくれ、プロフェッショナルになる機会を与えてくれた街です。
なぜなら、東京は私が一人暮らしや仕事を始めた街だからです。私は、何事も成せるんだと実感しました。そして、面白くて魅力的な人々に出会う機会にも恵まれました。私は彼らとの生活を楽しみ、親友もできました。そういった経験によって私は強くなりました。
だから東京を離れる時、私は何でもできると思いました。
東京は、私にとって大きなスタートでした。
アリーナさんにとって、ニューヨークって何ですか?
私の第2のステップです。
この街が、経済的な自立と、私が自分の理想とする人間になるためのステップになれば
いいなと思います。
ここには欲しいものが何でもあります。ロシアに戻る必要はありません。たくさんの
ロシアンレストラン、ロシアの製品や洋服、それに毛皮のコートまでも買うことが
できます。ニューヨークは、あらゆる文化で溢れているんです。
だから私は、この街の「探検」で日々忙しいです。

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