東京対談 #24 エロック・ハリマーさん

東京対談

あなたに会えてよかった。

2009年6月20日(土)

#24 エロック・ハリマーさん

川崎市外国人市民代表者会議 副委員長
(1995年に初来日。2002年より日本在住)

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外国人は自分の権利ばかり要求
していてはダメ。「日本の社会の
ため」に活動するという意識を
持つことが大事です。


今回は、My Eyes Tokyoが待ち望んでいたと言っても過言ではない人をご紹介します。インドネシアご出身のエロック・ハリマーさんです。
私が「待ち望んでいた」と言ったのは、エロックさんの日本での活動の目的が、まさにMy Eyes Tokyoの目指すところと一致しているからです。彼女は今、外国人にとって住み良い環境づくりを、お住まいのある川崎市にて行っています。その環境づくりは草の根レベルに留まらず、政令指定都市である川崎市の行政をも巻き込んで大々的に進められているのです。
エロックさんの視線の先にあるもの、それは「多文化共生」です。日本人市民と、たくさんの国からやってきた外国人とがお互いの文化を尊敬し合い、共存していく・・・そのような社会の在り方を理想として、エロックさんは今日も前へ前へと進んでいます。

* インタビュー@ Cafe Du Monde NOCTY溝口店(川崎市高津区)



English



外国人の生の声を、行政に。

私は現在、「川崎市外国人市民代表者会議」という組織に第7期の副委員長として参加しています。この会議は1996年に発足した、日本で唯一、条例(川崎市外国人市民代表者会議条例:内容はこちらでご覧になれます)に基づいて運営されている外国人支援組織です。
例えば、普通に外国人同士が会議をするとなったら、行政の人が口出ししてくる可能性だってあるわけじゃないですか。だけど私たちの会議ではこれがありません。だから100%私たち外国人の声を行政側に伝えることが出来るんです。どこからの影響も受けません。
他の自治体にも同様の組織はあるかもしれませんが、行政の条例によって守られているのは私たちの組織が唯一かつ初めてだと思います。川崎市役所には、私たちの提言を受け付けてくれる事務局もあります。
発足以来、会議からは30以上の提言が行政に上げられています。その中には、外国人がアパートなどを借りる時に生じる問題も挙げられています。これに対して川崎市には窓口がきちんと設けられ、保証人がいない場合はその窓口に相談すれば解決方法を教えてくれる、という仕組みが出来上がりました。
私たちの会議の席では、たとえ事務局の方でも発言できません。他の日本人の方々も同様です。ただ、年に1回「オープン会議」というのがあって、それには日本人の方たちも発言できます。オープン会議の目的が、地域の人たちのご意見を聞くことだからですし、同時に私たちの活動のPRの場にもなります。
この会議の存在を、川崎に住む外国人にもっと広く知ってほしいです。今期の任期は来年の4月で満了ですので、今は新たな代表者を募るためのPR活動をしているところです。


魚屋さんが導いてくれた日本。

そもそも私の日本との初めての出会いは、高校時代に体験したホームステイでした。奨学金の下りる留学先が日本しかなかったから、海外への憧れを抱いていた私は、当時行きたかったオランダをあきらめて、半ば仕方なく日本に来たんです。
ホームステイ先が、池袋の魚屋さんでした。皆さんが想像されるような、典型的な日本の魚屋さんです。でもそこはいろんな国から留学生を受け入れていた家だったんですね。インドネシア、タイ、オーストラリア、セルビア、ノルウェー・・・壁には留学生が写った写真がたくさん貼ってありました。
わずか3ヶ月間の日本滞在でしたが、インドネシアに帰っても日本の存在が忘れられなくなりました。それで、インドネシアの大学の日本語学科に進学することに決めたんです。以後、東京外国語大学への1年間の交換留学や、同じく外大の大学院への留学を通じて、日本語および日本文学の知識を深めてきました。


夫も外国人。

私は結婚しています。主人は日本人ではなく、アメリカ人です。日本で出会いました。
外国人同士が日本で生活するって、面白いですよ。主人が日本にもう20年以上住んでいることもあって、私たち夫婦は日本語は全く問題ありません。ただ、それでも日本と合わない部分ってあるじゃないですか。そんな時、主人は私より日本にずっと長く住んでいるから「ここは僕が何とかするから」って言う。だから私も黙る。その逆で、主人が怒って私が「まあまあ」ってなだめる時もありますね。
もし主人が日本人だったら、そういう問題が起きた時に「ここは日本だからね、あなたの国とは違うんだから」って言われて無理矢理押さえつけられてしまう可能性が大きいです。でも私たちは2人とも外国人だから「これが日本のやり方だよね」と受け入れて終わります。

*エロックさんのご主人にもインタビューしました!ご興味のある方はこちらからどうぞ。


外国人に優しい街=日本人にとって住み良い街。

私たち夫婦が川崎に住むようになったのは偶然の流れですし、この街に住み始めた当時は、今私が携わっている「川崎市外国人市民代表者会議」の存在を知りませんでした。でもこの街では、提言を作成し、行政に上げることができる立場に、私たち外国人が立てています。市の条例のおかげです。
川崎市の外国人人口は約3万人と聞いています(市の総人口は約140万人)。かなりの数の外国人が川崎を住む場所として選んでいるわけですが、その理由は産業が発達していて雇用があるというだけではないと思います。川崎にはまだ緑がたくさん残っていながらも、渋谷や横浜への交通の便は最高で、家賃は都内に比べて安い。そういう理由で川崎を選ぶ外国人もきっと多いと思います。
それに加えて私たちの会議のような、全国で唯一、市の条例によって運営されている外国人支援組織がある。もしかしたら川崎は、外国人にとって日本で一番住みやすい街と言えるかもしれませんね。
私たちのモットーは「外国人の住みやすいまちは、日本人も住みやすい」です。逆に言えば、決して日本人にとってデメリットになることを要求していてはいけない。ただ単に自分たちの権利ばかり要求していてはダメなんです。
各代表者が自分たちの身の回りの問題を話し合い、提言に持っていくわけですが、そこで大事なのは、「我々外国人にとって住みやすい環境をつくるため」ではなく、「日本の社会のため」に活動するという意識を持つことです。これらの問題を解決することは、ひいては日本全体にとっての利益になるんですよ、ということを行政に伝えることが大事です。


時代のうねりは外国人をも呑み込む。

外国人の中には、日本生まれ・日本育ちという人がいます。彼らの場合、ニューカマーの私とは違う問題が出てきます。だから一口に外国人の抱える問題と言っても、奥が非常に深いです。そういうことが行政の方たちにだんだんと分かっていただけているのではないかと思います。
また、解決した問題がある一方で、時代の流れと共に新たに出てきた問題があります。例えば昨今の経済危機で、工場などで働く外国人労働者たちが契約切れで解雇されるという問題です。他にも、日本人男性と結婚した外国人女性がDV、ドメスティック・バイオレンスに悩まされるという例も出てきています。これはDVという言葉が表に出てきたという時代の流れと一致します。
問題は次々に出てきます。だから全ての問題を完璧に解決していくことは出来ないかもしれません。それでも川崎市に住む外国人の問題を全て洗い出して、解決に向けて話し合っていく。それが出来たらベストですね。


外国人への日本語教育のさらなる充実を!

私自身が取り組んでいきたいこととして、外国人への日本語教育支援があります。
日本の義務教育は中学までですよね。川崎市では小・中学校に通う外国人への日本語教育支援態勢がきちんと整っています。ただ問題は、高校に入ってからの教育支援です。一部の高校ではそれが為されているんですが、まだ十分ではありません。高校の後には大学が控えていますから、日常会話としての日本語だけではなく、受験勉強にも対応できる日本語の教育についても支援していただきたいんです。
例えばインドネシア人の子どもが、親が日本人と結婚または再婚したことで日本に来ることになって、日本の中学校に入った。だけど中学を卒業しても日本語能力が足りないばかりに職にも就けないし、高校進学もできない・・・そういう子たちを助けてあげないと、私たちが大変なんです。だって、そういう子たちは暴力や犯罪に手を染めたりする可能性が高いんですから。それを防ぐためには、まずは教育面をサポートしなくてはいけないと思うんです。この問題について今私たちは話し合っていて、恐らく近いうちに提言になると思います。


多文化共生の実現に向けて。

任期は2年ですが、2期までできます。だから可能であれば、来期もやりたいですね。
それで来期も活動できたら、任期終了後は一旦会議を離れて、NPOを通じて多文化教育に取り組んでいきたいです。学校を訪問して、生徒さんたちに「世の中にはいろんな文化的背景を持つ人たちがいる」ということを伝えていく活動です。だから私のライフワークは「多文化共生の推進」ということになるでしょう。
私は教育の大事さを感じます。子どもの頃に私たちは他の国の文化について教えてもらえなかったのに、大人になってから急に「差別はいけない」などと言われる。でも本当に差別をなくすためには、小さい時からいろいろな文化に触れる必要があると思います。だから、私は小学校や中学校で自国の文化、つまり食べ物から生活習慣、果ては宗教までを、子どもたちの教育段階に応じて伝えていく試みをしていきたいと考えています。
「多文化」と言えば、主人の国であるアメリカが典型例です。日本と違って、もっとそれぞれの文化が主張し合うように混在します。でもたとえアメリカで多文化共生を推進する活動をしたとしても「何を今さら」って言われかねないですよね。
一方で、日本はまだ文化的な多様性がそれほど目立たない。よく見ればいろいろな国の人たちが住んでいるのが分かる程度です。私の取り組みたい活動は、そういう日本だからこそできるんだと思います。



エロックさんにとって、東京って何ですか?

東京に来ていなかったら、今の私は存在していなかった
でしょうね。

東京に来たから、池袋の魚屋さんのご家族とも会えたんです。そして彼らのおかげで日本に
興味を持ち、日本語に興味を持ち、そして日本文化に興味を持ったんです。
私は、東京に留学生として来てから初めて外国人と生活をしました。それ以前の私は、
インドネシアの小さな町しか知らない子どもでした。

東京は、そんな私を広い世界に導いてくれた街です。



エロックさん関連リンク

川崎市外国人市民代表者会議 :

http://www.city.kawasaki.jp/25/25zinken/home/gaikoku/kaigi/index.htm


川崎市多文化共生社会推進指針(PDFファイル):クリック!


『ELOKの「日本をENJOYしましょう!」』(ブログ):http://enjoyjapan.exblog.jp/

東京対談 ドナルド・ノーディングさん (エロックさんのご主人):

http://www.myeyestokyo.com/aboutme/Interview/taidan/pg49.html




Tokyo Interview (英語)

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