関西ちりとてちん対談 #3 ダイアン・オレットさん

関西ちりとてちん対談

あなたに会えてよかった in 関西

2009年8月21日(金)

#3 ダイアン・オレットさん

落語家・バルーンアーティスト
(1990年より日本在住)

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笑いは世界共通の感情表現です。


My Eyes Tokyoはこの夏、日本のお笑いの都・大阪に飛びました。2008年はじめにも大阪と京都で2人の外国人エンターテイナーとのインタビューをしましたが、最近新たな外国人パフォーマーの存在を知りました。
その人の名は、ダイアン・オレットさん。イギリス人の落語家です。ダイアンさんは日本語と英語の2ヶ国語で落語を演じます。一方で、風船で動物やアニメのキャラクターなどを作るバルーンアートのパフォーマンスもしています。
私が大阪に行く前夜、電話で初めてダイアンさんと話をした時、彼女の明るさと礼儀正しさにとても感銘を受けました。きっとインタビューはうまくいくだろうと確信し、そしてその通りになりました。インタビューは笑いに包まれた楽しいものになりました。ダイアンさんは生まれながらのエンターテイナーなんだな、と思いました。
高座名のダイアン吉日(大安吉日)が示す通り、ダイアンさんは人々を楽しませ幸せにすることが心からお好きなんでしょう。世知辛い世に咲く生命力あふれる一輪の花として、ダイアンさんは今日も人々を元気づけています。

*インタビュー@パティスリー「ル・アイ」 (大阪・谷町六丁目)

*翻訳協力:NPO法人セカンドスペース


関西ちりとてちん対談
#1 スペンス・ゼオースキさん: こちらをクリック!
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English



伝統芸能は今でもパワフルです。

日本の落語には決められたスタイルがあります。語り手は座布団の上に正座をします。一見不自由に思えるスタイルですが、落語家はこの態勢でとてもアクティブに演技をします。歩き、走り、飛ぶことだってできるんです。
落語では一人の人間が衣装を一度も替えることなく、登場人物の全員を演じます。しかも演目で使う小道具は扇子と手ぬぐいの2つだけです。これが落語のとても独創的なところだと思います。
落語には350年の歴史がありますが、今でもとってもパワフルで、ちっとも色褪せていません。まだまだ人々を笑わせ続けています。そして落語は、外国人に日本や日本人について教える良いツールだと思います。どの世代の人たちにも受け入れられる娯楽なんです。
私は根っからのアーティストで、イギリスではグラフィックデザイナーでした。だから、ものづくりが大好きなんです。噺を作ること、アイディアを練ること、登場人物を考えること・・・すべては想像力が基本です。落語の世界は想像力の世界です。観客にある場面を想像させることができるかどうか、それは噺家の腕次第なんです。

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ビートルズの故郷から始まった冒険旅行。

大阪には1990年、当時滞在していたバンコクから来ました。世界中を旅していていたんです。今までに(2009年8月21日現在)38カ国を旅してきました。1988年にイギリスのリバプールを出発してから日本に来るまでにカナダ、ハワイ、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、マレーシア、タイを廻りました。
子どもの頃からずっと外国に興味があったんです。近所の人たちが旅行に行くと、お土産にお人形を買ってきてくれました。いろいろな民族衣装を着た外国のお人形をいただいては、コレクションしていましたね。いろいろな国について書かれた本を読んでは、いつかそれらの国に行くことを夢見ていました。外国の人がどんな暮らしをしていて、その国の子どもたちはどんなことをしているのか、空想をめぐらせていました。すでに3歳の時には、将来は外国に行こうと心に決めていたくらいなんです。


大阪はリバプールに似てる。

ニュージーランドにいた時、日本に1年間住んだことがあるというサンフランシスコ出身の女性と知り合いました。その後タイで再会し、日本のことをいろいろと私に話しました。その彼女が日本行きをアドバイスしてくれたんです。彼女が大阪に住んでいたという理由で、最初に大阪に行ってみるといいんじゃない?って言ってくれたんですよ。だから私はバンコクからそのまま大阪行きの飛行機に乗りました。今では、彼女がすごく正しい方向に私の背中を押してくれたと思っています。
大阪は故郷のリバプールにとても似ています。みんな笑うのが好きで、ユーモアのセンスにあふれています。地元のご近所ではみんなが親切でフレンドリーです。
何かが私を日本に留まらせたんですね。芸術や伝統的なものにとても興味を持ちました。日本の文化、特に着物のデザインに魅きつけられました。着物は単に着るものというのではありませんね。芸術品、美術品だと思っています。私が日本に約20年いる理由のひとつですね。


落語とのめぐりあい。

英語講師をしていた私の友人の生徒が、落語家の桂枝雀師匠でした。友達が電話をかけてきて言ったんです「英語で落語をやっている生徒がお茶子になる外国人を探しているよ」って。
お茶子とは演目の合間に座布団をひっくり返すなど諸々の用事をする裏方のこと。私は落語の世界を全く知らなかったのでNOと言おうとしました。だけど彼が「着物を着せてもらえるよ」って言った瞬間「OK、やるわ!」。即答でしたね。着物を着るのが大好きだから師匠のお茶子になろうと決めたんです。
師匠のお茶子としての私のデビューは1996年でした。その日の晩まで、落語が何なのかさえ知らなかったんですよ。当時の私の日本語では落語が理解できませんでしたから。でもお茶子でしたから、仕事の合間に舞台の袖から枝雀師匠の演目を何回も観ることができました。師匠の活き活きとした演技、身振り手振りと語り口に惹きつけられました。

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落語家デビュー。

私は落語道場に入り、視線の配り方や声の抑揚、人物の演じ分け方、小道具の使い方や動かし方など、落語の基本を勉強しました。そしてついに高座に上がりました。
私は子どもの頃は恥ずかしがりやだったんです。それでも、 時には500人を超えるお客さんの前でも演じることのある落語家になりたいと思った。それが実現したんです。
シャイだった少女時代にはまず想像できなかったことだけど、とにかく落語をやりたいと思う情熱があったからこそ、恥ずかしがりやを克服することができました。舞台に上がることへの不安や恐れよりも、落語への情熱の方が強かったんです。
それでもっともっと興味が湧いてきて、自分でオリジナルの噺を書き始めました。日本語です。「課長」という演目で、日本の社会独特の上下関係を描いたものです。誰もが彼に賛成していなくても、彼の言う通りにやらなくてはならない、だって彼は課長だしね・・・日本で何回も目にしてきたシチュエーションです。


落語から学べること。

その後、英語落語を始めました。日本での自分の経験について書くのは楽しいですね。日本人のお客さんは笑ってくれますし、外国人のお客さんは「自分にも同じことがあった!」と思ってくれます。日本人のお客さんは落語のストーリーで笑ってくれるのと同時に「外国人に会ったらいつも同じことをしている!」とか「外国人がいつも同じ質問をされるって言っていた、その意味がわかった」 と気づくそうです。
落語はいつの間にか、文化の違いを超えてメッセージを送り合う手段になっているのかもしれませんね。外国に行く日本人の噺なら、その中にはこれから外国に行こうとされている日本人の方々にとってのヒントになる経験が散りばめられています。
それに私自身も、古典落語を通じてたくさんのことを学びました。落語に出会うまでは、昔の日本人がどんなふうに暮らしていたか知らなかったんです。私たちは、落語を通してたくさんの文化や言葉、歴史について学ぶことができるんです。

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ダイアンさんは落語家であるだけでなくバルーンアーティストでもあります。
どちらも人々を楽しませ、ハッピーな気持ちにするお仕事です!


落語はどんな国境をも越えていく。

今までにイギリスで2回、それにアフリカやオーストラリアでも落語をやりました。どの国にもその国ならではのユーモアがあります。どの国の人々にもそれぞれ異なるユーモアセンスがありますから、誰もが共感できるポイントを見つけて、そこをすかさず突く。そうして人を笑わせることができれば大成功です。
ただ、いろんな国で落語を演じていると、ある国で面白いと思われるものが、別の国では不快に感じられるという場面も出てきます。海外で演じるためには、そういうことも学び、注意を払わなくてはいけません。
でも、どんなに文化が違っていても「笑い」という感情表現は世界共通なんです。赤ちゃんだって笑うでしょう?私たちはみんな、面白いものを見たら思わず笑っちゃうんです。それはどこへ行っても同じです。
毎回どの噺も新たな気持ちで演じます。日本に来たことのない外国人の前で落語を演じる時には、昔の日本の生活風景がその人の目の前に浮かぶように演じなくてはなりません。しかも外国のお客さんの大半は、現代の日本についてすら知らないんです。ではどうすれば、その人たちに昔の日本の風景を見せることができるんでしょうか?当然、私たち噺家自身が100年前の日本の生活を理解しておく必要がありますよね。
日本の若い人たちも自国の古い伝統的な部分をあまり体験していませんよね。そういう意味では外国人と同じとさえ言えます。日本の子どもたちに落語を聞かせても、落語が何なのかさえ知らない子もいます。でもそんな子どもたちに、ちょっと落語をやって見せたら楽しんでもらえるんです。この経験は、海外で落語を演じる上で大きなヒントになっています。
日本の文化を知ってもらうために、もっと海外で落語をやりたいです。落語だけではなく他にも日本の伝統的な側面を知ってもらうためにもね。私は私自身の思い出や感動、日々日本で体験することを、みんなと分かち合いたいんです。


伝統芸能の世界で果たすべき役割。

外国人として英語で落語をやることは今でもまだ目新しいので、私は本当に良いポジションにいると思います。「英語落語って何?」「外国人がやる落語ってどんな感じ?」って、みんなが興味を持ってくれるんです。それがきっかけで英語落語寄席に多くの方にお運びいただいています。
それを見た子どもたちがアンケートに書いていました。「今日、生まれて初めて落語を見ました」って。つまり彼らにとって最初の落語体験が、外国人が演じる英語落語だったんです。英語寄席を楽しんでもらえたのなら、日本語の落語寄席にも行きたいと思うでしょう。何事も、人に必要なのはきっかけです。落語に興味を持つきっかけに、私自身がなれたらと思いますね。
日本の皆さんはあまりご存知ないようですが、世界中の人たちが日本について知りたがっているんです。「イギリスの子どもは日本がクールだと思っているんだよ」って日本の高校生に教えたら、彼らはすぐに日本文化の価値を認め、誇りに思うでしょう。そういうことも、私はやっていきたいですね。

IMGP1757.JPG *撮影協力:川根明子

ダイアンさんにとって、落語って何ですか?

多くのものを一度に運べる“乗り物”です。

噺をして、ユーモアを分かち合い、言葉や文化を学び、情報を与え、人を教育し、
笑わせる・・・

私たちは落語を通じてたくさんのことを学ぶことが
できるんです。



ダイアンさんにとって、日本って何ですか?

私が自分自身を見つけた場所です。

多くの課題に向き合ってきました。良いことも悪いことも経験しました。
自分自身についてたくさん学びました。ここで本当に成長しましたと思います。

日本は私が新たな自分に生まれ変わった場所です。



ダイアンさん関連リンク

ダイアンさんのウェブサイト:http://www.diane-o.com/





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